フランス国立造幣局の歴史 | 泰星コイン<創業1967年>

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フランス国立造幣局の歴史

2021年01月15日
 
Monnaie de Paris

目次

貨幣、それは歴史にまつわる王権の象徴

フランス国立造幣局外観

フランス国立造幣局外観

 

モネ・ド・パリ(フランス国立造幣局)は、フランスの歴史とフランからユーロに至るとともに、貨幣制度に深く関わっている。

アンシャンレジーム(旧体制)

歴史上のいかなる時代にあっても、貨幣の鋳造・流通を自らの手のうちに独占したいというのは為政者の大きな欲望であり、現実に実現しなければならない必要事である。

 

768年に即位したフランク王国のカール大帝(シャルルマーニュ)はこの時既に、貨幣の発行権は国王が握らなければならないと理解しており、シャルル2世は864年の王令で、「宮殿以外での貨幣鋳造を禁止」した。それでも、貨幣の鋳造体制が整うまでには数世紀を要したのである。1358年、貨幣の鋳造は王家の管理下にあったが、通貨に関わる法的権限と規制監督権は行政当局が持つという「二重構造」が出現し、その原則は1879年、第三共和国の時代まで500年以上に渡って維持された。

フランス革命から現在まで

フランス国立造幣局がフランス財務省の直轄となったのはフランス革命の時代、共和暦4年目の1796年ヴァンデミエール(9月)22日、23日の法律が採択された時からである。ナポレオン3世が失脚して第三共和国が成立し、1879年7 月31 日と11 月20日に制定された法律によって、貨幣鋳造権はようやく国家によって最終的に独占されることになった。

1973年、フランス第五共和国政府は金属鋳造から最終パッケージの製造に至るまでの貨幣の全工程を、ジロンド県ペサックに建設する最新鋭の工場に集約すると決定した。以後25年以上にわたって、自国および外国貨幣はこの施設で鋳造され続けており、1998年春にはこの施設に大規模な資金が投入されて、8種類のユーロコインの鋳造が始まった。そして2007年1月1日、フランス国立造幣局はEPIC(国営通商産業公社)に改組され現在に至る。

EPIC

EPIC(国営通商産業公社)はフランス共和国の全流通貨幣の鋳造を独占している。また、ユーロ偽造コインの撲滅を目指して国家のために保証マークを制作するとともに、貨幣博物館のコレクションを一般社会に紹介するのも任務の一部である。フランスの財務部門および国家予算部門については、この造幣局が国家機関として経済財務産業省の監督下に入る。

国家サービスの産業としてのツール

コインをデザイナ

彫刻師が真鍮板へコインの図案を彫っている様子

 

フランス国立造幣局の任務は産業と通商の両面に渡っており、パリ中心部、セーヌ川のポン・ヌフ河岸に佇むホテル・ド・ラ・モネとジロンド県ペサックにある貨幣鋳造工場の二ヶ所でサービスを提供している。ペサック工場は当然、冶金に関連するさまざまな設備を備えているが、それに加えて特別な任務も兼ねている。35年以上も前から500名(2019年末の時点)を超える従業員が、フランスのコイン、ユーロコイン、それに外国の流通通貨の鋳造を担っているのである。ユーロに関していえば、1998年から2020年までの間に240億枚のユーロコインの鋳造を行った。

フランス国立造幣局という世界的な知名度をもとに商業活動

Monnaie de Paris

フランス国立造幣局内にある門の素敵な装飾

 

フランス国立造幣局の役割は、コレクターコインやメダルの制作に留まらず、文民、軍の名誉勲章、ブロンズアート、宝飾品、装身具の製造などの文化的、芸術的分野にまでも及ぶ。こうした製品は、フランス国立造幣局の登録商標で国外へ一般販売もしている。特製メダル、企業による特別注文のギフトなど、企業向けの生産活動も大々的に行っており、ホテル・デ・ラ・モネのサロンは、販売促進活動の絶好の場として、企業、公的機関、団体などへ提供されているのである。

創作、保全管理、遺産のための公的スペース

フランス国立造幣局の入口

造幣局の中心にある通り。左手には貨幣博物館がある。

 

フランス国立造幣局は貨幣博物館の管理もしているが、新型コロナウイルス感染を防ぐ為にフランス政府からのガイドラインに従い、パリ造幣局博物館を2021年1月に閉鎖した。今のまだ閉鎖中である。博物館はルーブル美術館に向かいあうホテル・デ・ラ・モネ内にあり、特に若者向けのツアーや、その他の活動に力を入れている。通常は展示、個人販売、コンサート、貨幣およびメダル収集家向けオークションを行っており、2003年からはテーマを決めてコンテストを呼びかけ、彫刻家、グラフィックデザイナー、イラストレーター、アーティストたちに門戸を開いている。彼らの作品は博物館の保有する職人や彫刻家の作品に、さらに芸術的深みを与えてくれている。

 

貨幣博物館では研究者や学生などが、数世紀にわたって保存された歴史記録を閲覧する姿も見受けられる。コンティ河畔11番地に位置する貨幣図書館でも閲覧が可能である。フランス国立造幣局は、シャネル、ルイ・ヴィトン、ディオールなどフランス産高級ブランドの宣伝・保護のための非営利団体として権威を持つコルベール委員会のアソシエイトメンバーであり、パリ・ソルボンヌ大学の「ファッション・アート・ラグジュアリー」博士号プログラムのパートナーでもある。

 

500ユーロ記念硬貨

フランスで人気を誇る、通称 “種を蒔く人” の鋳造風景

 

星の王子さまコインデザイン

石膏(通称:プラスター)へ星の王子さまを彫る様子。

著者 Author
南の人
最初に入手したコインは1900年のアメリカモルガンドルでした。