英国王立造幣局の歴史 | 泰星コイン<創業1967年>

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英国王立造幣局の歴史

2020年12月22日
 

目次

はじめに

英国王立造幣局には1100年以上にもわたる非常に長い歴史がある。古くはロンドンのあちこちにアングロ・サクソン民族の貨幣鋳造工房がばらばらに存在していた時代があり、ロンドン塔内で安全を保証されて作業を続けた時代もあった。19世紀に入ってタワー・ヒルに単独の工場が建設され、今ではサウスウェールズに最新鋭の貨幣鋳造施設を持っている。

 

ロンドン塔

1279年から1812年まで、ロンドン塔は英国王立造幣局の本家であった。

英国王立造幣局小史

イギリスで貨幣鋳造が始まったのは、紀元前1世紀頃である。初期には鋳型に流し込む鋳造法だったが、まもなく人間の手で打ち出す鍛造(通称:ハンマー打ちコイン)に変わり、以後1500年間、その方法が続いた。鉄器時代の部族による硬貨鋳造は古代ローマ人のブリテン島征服とともに終わりを告げ、その後は古代ローマのコインがイギリスで流通することになる。

 

貨幣鋳造者

アルフレッド大王の時代、手作業で貨幣を鍛造する初期の貨幣鋳造者

 

塔内の統合

9世紀、バイキングの侵攻を撃退したアルフレッド大王の時代には、ロンドンはイギリス中に70あった貨幣鋳造所の1つにすぎなかったが、ノルマン人による征服以降、その数は減少し始めた。12世紀後半にはロンドンの貨幣鋳造業者たちが密接に連携するようになり、最終的に1箇所に集約されて、1279年、造幣所はロンドン塔内で安全を保証された場所を占めるにいたった。

ロンドン塔

その後の500年間、造幣局はロンドン塔内にとどまった。17世紀には貨幣鋳造工程に圧延機とプレスが導入されて、機械化が進む。技術革新でコインの外観が改善され、縁から金銀を削り落としたり偽造したりするのは難しくなるにつれ、仕事場が機械に占領されて窮屈になり、造幣局の移転話が持ち上がって、ついにはロンドン塔を出ることになった。

タワー・ヒル

タワー・ヒル

タワー・ヒルの英国王立造幣局の豪華な本館

 

移転場所に選ばれたのはタワー・ヒルの近郊で、1809 年末までに移転が完了した。1810 年の4月に最新鋭の機械の試運転が行われ、1812年に完全に完成した。「途方もなく」しかも「美しい」機械を装備した新造幣局は、古い造幣局とははっきり異なっていた。ジェームス・ジョンソン設計の本館は、ロバート・スマークの手により、「控えめな豪華さ」を持って完成した。2つの守衛詰所が本館の側面に建ち、後ろにはオープンな中庭を隔てて、機械を収容した建物群が建っている。幹部職員やスタッフのための住居があり、境界となる壁が敷地を取り囲む。壁の内側は狭い小道となっており、造幣局警備隊(ミリタリーガード)の兵士がパトロールするので、「ミリタリーウェイ」(軍道)の名で呼ばれるようになった。

増設

1880年代になって工場の建物は再建、増築された。同時に新型コインプレス機が設置され、溶解・圧延能力も増した。世紀が変わる頃にはさらなる改築が行われて、電気が蒸気に取って変わり、住居は接収された。この頃、造幣局は国内外のコイン需要の爆発的な増加に対応するため、建設や修理は恒常的なものであった。1960年代ともなると、スマークが建てた本館と守衛詰所を除いて、当初の造幣局の建物の姿は、ほとんどなくなった。

ロンドンからの移転

英国コイン ペンス

英国コイン ペンス

 

 

1950年代には造幣局を建て直す必要性が認められたものの、1971年の十進法化準備のため、先行して莫大な数のコインを鋳造しておく作業があり、同時に海外の顧客のことも無視できないという事情もあった。1967年に発表されたカーディフ北西10マイルのラントリサントでの新造幣局建築計画は、政府の産業を首都から振興発展地域に移転させる政策に沿ってのもので、時を経ずして移転作業が始まり、1968年12月17日、女王エリザベス2世が第一段階の竣工式を行った。鋳造はタワー・ヒルからラントリサントに徐々に移転され、1975年には溶解、圧延、コインブランクの施設が完成して、鋳造が開始された。ラントリサントでコイン製作の全工程が可能となった1975年11月、最後のロンドン製コインとしてソブリン貨(1ポンド金貨)鋳造のセレモニーが行われ、1980年にタワー・ヒルの建物は最終的に手放されたのである。

 

今日、東京ドーム約3個分の面積を持つラントリサントの最新鋭工場は、彫刻術、銀細工術などの伝統技能と最新技術が組み合わされて、コインやメダルを鋳造する絶好の例となっている。

 

英国王立造幣局 サウスウェールズのラントリサントにある英国王立造幣局の新しい建物

今日の英国王立造幣局

記念コイン

英国造幣局記念コイン

 

 

The Royal Mint Experience

「The Royal Mint Experience」ツアーガイド

 

今日の王立造幣局は、大蔵省が完全に所有する営利団体です。 英国で最初の硬貨鋳造者として、王立造幣局は、1100年の職人技と技術的に高度な鋳造を組み合わせた、最先端の貨幣製品と経験を提供しています。 彼らは、貴金属への投資、歴史的なコイン、受賞歴のある観光名所など、新しい分野で多様に活動しています。 ロイヤルミントはそのルーツを忠実に守り、毎年30を超える新しい記念コインのデザインを作成して、音楽の伝説であるサー エルトン・ジョンや映画シリーズのジェームズ・ボンドなど、英国の主要な記念日や文化的肖像を表現しています。

輸出業者および雇用者として

ロイヤルミントは世界最大の輸出をしている造幣局であり、毎年30か国で約30億枚のコインを鋳造しています。 サウス・ウェールズの安全性の高い地域に拠点を置き、最大1000人を雇用しています。 英国および国際的な800以上の企業のサプライチェーンと連携して、主要な貨幣および貴金属製品を鋳造しています。

著者 Author
南の人
最初に入手したコインは1900年のアメリカモルガンドルでした。